今までお話してきた治療法は、予防的治療にしろ、炎症の治療にしろ、対症療法に過ぎません。「花粉症はもう一生治らないんですかあ？」、花粉症にほとほと嫌気がさしている患者さんが、もういい加減にして欲しいといった顔で、不満げによく私に質問してきます。私もハウスダストアレルギー持ちですし、お気持ちは分かりますが、私は花粉ではないんですから、お願いですからそんな顔で私を睨み付けないでくださいね（笑）。
花粉症に限らずアレルギー全般そうですが、これは免疫反応ですから、基本的に一度なってしまったアレルギーをなくすというのは困難な事と思われます。
一度罹ったウィルス感染症には二度と罹らないという事は皆さんよくご存知ですね。子供の頃に「はしか」に罹ったら、一生はしかには罹りませんね。これは、体の中に、はしかのウィルスに対する抗体ができて、それが一生、抗体を作る免疫細胞に記憶されているからです。最近は予防接種をするので、はしかにかかる子も少ないですが、この予防接種も、軽く病気に罹った状態にするために、弱毒化、不活化して、ひどい症状を起こさないよう処理したウィルス＝ワクチンを打って、体にウィルスに対する抗体を作らせ、それで免疫を得ているのです。
アレルギーも同じです。スギ花粉アレルギーの人は、体内に侵入したスギ花粉に対して、体がこれをウィルスと同じような異物として覚えて抗体を作ってしまっているのです。他の免疫と同じで、抗体を作る免疫細胞はスギ花粉を一生覚えていますから、一度なってしまったら治らないと考えるのが普通です。
本来病気に対抗するために発達した免疫のシステムが逆に人を苦しめているのです。問題なのは、スギ花粉と抗体が反応すると、前にお話したような人体に不快な症状を引き起こすという事です。
根本治療は可能性がゼロという訳ではありません。
「減感作療法」という治療法があります。減感作療法は私の学位論文のテーマですので、きっと力が入ってしまうので、次回から詳しくお話します。